中村昌宏の和菓子話

中村昌宏が気ままに和菓子について書いていこうと思っております。東京(五反田,高輪など)の懐石料理店にて修行後、和菓子職人に。

五反田の江戸みやげ本舗進世堂:煎餅屋の名店

テレビでも特集されるほどの和菓子の老舗 五反田の江戸みやげ本舗進世堂

江戸みやげ本舗進世堂。和菓子好きの方でも、もしかしたら余り馴染みのないお店かもしれません。五反田の大通りから少し入った場所にひっそりある進世堂は、創業が明治の老舗です。しかしどこか知る人ぞ知る、といった趣があり近隣の人でも存在を知らないことが少なくないのです。恥ずかしながら私もそんな1人。五反田へ自転車圏内に住みながら、TV番組{和風総本舗」でその存在を知りました。伺ってから今まで知らなかったことを激しく後悔しました、それほど江戸みやげは素晴らしい一品だったのです。そしてこの商品、署名人もわざわざ買いに訪れるまさに「江戸みやげ」でもありました。

江戸みやげは、えびせんをはじめとした9種のあられやノリ巻きが吹き寄せ(詰め合わせ)になった進世堂の看板商品。大正10年に商標登録され、以来六代に渡り受け継がれている伝統のあられです。たかがあられ、とは決して言えない拘りが随所につまっており、一旦食べ始めると1人で一袋食べてしまうことも!

五反田の和菓子 江戸みやげにやみつきになる

まず江戸みやげの半分以上を占めるえびせんですが、知多半島のアカエビを使用しています。良質のアカエビは年々漁獲高が減少している貴重なもの。こうした天然物を味わえるだけでも価値がありますね。

アカエビはむき身にして揚げられていますが、この油がまた素晴らしい。太白油など天麩羅屋で使われる質の高いもので揚げているので、一気に食べてしまっても胃にもたれないのです。だからこそ止められなくなってしまうのですが・・・。

またあられの命とも言えるお米も凄い。というのは、こだわりが高じて新潟に棚田を所有し、大正時代の米を復刻した「しめはりもち米」を栽培しているのです。新潟のお米は美味しい。特にもち米はピカイチだと心から思います。それを使用したあられなので、美味しさは言わずもがなでしょう。

えびせんにあられ、ノリ巻きにちょっとお豆が入り、食べ進む中で口の中で渾然とする瞬間が好きです。ほどよい塩味と醤油味が混ざったり、えびせんとあられ達の違う食感が楽しめたり。食べ終わるまで幸せな気分でいられるのです。五反田にわざわざ行く用事を作りたくなる、江戸みやげはそんな一品です。