美味しかったという言葉が聞けるのが中村昌宏の幸せ
和菓子店を運営するようになって、
なかなか直にお客様からの声を聞かなくなってしまった現在。
それでも、中村昌宏の名前を申付けて下さって、
わざわざ前回食べたものの感想を述べてくれるお客様がいます。
こうした「わざわざ」というのが、本当に有り難い。
「美味しかった」
その言葉が聞けるだけでも、私は幸せなのです。
お客様との会話が楽しめた割烹時代。
今でも懐かしく思うこともありますし、
そのまま続けていたら、自分はどのようになっていたのだろうと思うこともあります。
でも、後悔はしていないのです。
60代になって、残りの人生を考えると、
やりたいことを残したくないという思いがこみ上げてくるのです。
だからこそ、今では小さなお店を自分で構えるようになっています。
それは、自分の責任で作ったものに対して、
心から「美味しい」という言葉が聞きたかったのです。